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すでに販売した物も特許になる?-化学・バイオ系の発明におけるパラメータ特許の活用方法

以下のクレームは、誰もが購入したことがある商品に関する特許出願のクレームです。何の商品のクレームか分かりますか?

【請求項1】 略アミロペクチンにより構成されるでん粉と糖類と水との混合加熱により得られる粘弾性物にて冷菓を被覆することを特徴とする被覆冷菓。

正解は、「雪見だいふく」に関するロッテ社の特許出願のクレームです。

この特許は、1981年5月29日に出願された特願昭56-80771号のクレームです。そのままの内容で、1989年12月21日に登録になっています(特許1537351号)。

雪見だいふくの発売日が1981年10月とのことですので、ロッテ社は、発売の4ヶ月程度前に特許出願を行ったようです。

この特願昭56-80771号(以下、「先の出願」)から20年が過ぎようとしていた2001年3月19日、ロッテ社は、以下のクレームで新たな特許出願をしました(特願2001-079558号、以下「後の出願」)。

【請求項1】 もち米:うるち米が略100~85:0~15で構成されるでん粉と糖類と水との混合加熱により得られる粘弾性物にて冷菓類を被覆する被覆冷菓からなり、前記粘弾性物が、でん粉を3~55重量%、砂糖と麦芽糖が1:0.5~2の比率で全糖類量の50重量%以上を占める糖類を20~70重量%、水を25~40重量%含有することを特徴とする被覆冷菓。

この出願のクレームと先の出願のクレームを対比して、相違点を下線で示しました。つまり、先の出願との相違点は、以下①、②の2点です。

①先の出願が「略アミロペクチンにより構成されるでん粉」が、後の出願で「もち米:うるち米が略100~85:0~15で構成されるでん粉」になっている点

②後の出願で、「前記粘弾性物が、でん粉を3~55重量%、砂糖と麦芽糖が1:0.5~2の比率で全糖類量の50重量%以上を占める糖類を20~70重量%、水を25~40重量%含有する」という限定が加わっている点

つまり、でん粉中のもち米とうるち米の比率、でん粉と砂糖と麦芽糖と水の比率の2点の比率を新たな特許で特定したことで、特許性を創出したのです。

このように、先の出願と後の出願は上位概念・下位概念の関係にあることから、先の出願と後の出願には重複する範囲があります。

ロッテ社が2001年3月19日までに販売したものが、後の出願の範囲に含まれていたかどうかはわかりませんが、ある特定の製品について先の出願でカバーした後、その後うまく特許出願をすればその出願でもカバーすることができる、すなわち、先の出願から20年以上後でも、同じ製品をカバーする権利を取得することができるようになります。

これと同様に、一度販売した製品でもうまくクレームや実施例を作ることによって同じ製品をカバーする権利を取得することができるようになります。

なお、後の出願は、2021年3月19日付けて特許権が消滅しました。以前の雪見だいふくのパッケージには特許番号が付されていましたが、現在の雪見だいふくのパッケージには特許番号が付されていません。

雪見だいふくに関する”第3の出願”はされているのか今後も注目したいですね。

以上の雪見だいふくの例は、原料の比率のパラメータを特定していますが、近年では製品を特定するパラメータも複雑になってきています。

次回は、どのようにしてパラメータを作っていくか、アイディアの出し方についてお話したいと思います。

                                       執筆:制野